
・今後ドル円はどうなるの?
・ドルを買おうか迷ってるけどいつ買えば良い?
こんな疑問をお持ちの方向けにこの記事を書きました。
この記事を読めば
・ドル円を動かす材料
・ドルを買うべきかどうか
が分かります。
わたしは現在銀行員でして、これまでに証券会社・外資系金融・コンサルで働いてきました。
一貫してマーケット関連業務に携わってきており、当ブログでは会社のビューに一切関係ない個人的な意見を発信していきます。
(完全個人ブログなので、契約上の問題からBloombergやReutersなど会社が契約している情報ソースから得た情報は一切ありません)
金融機関に所属している人間が、本音ベースではドル円をどう見ているか知りたい方は、ぜひお読みください。
ドル円の2019年の変動幅は過去最低水準

ちなみに直近5年間のドル円の推移は以下の通りです。

出所:Trading View
2019年のドル円の変動幅は約8円でして、このまま推移すると1年間のドル円の反動幅としては過去最低になります。
(ちなみに、従来の過去最低は2018年の約10円です)
「ドル円が全然動かないのは何故?」
こういった疑問が出てくるのも自然かなという印象です。
ドル円が動かないのは重要な材料で白黒つかないから

これはドル円に限らず他のプロダクトも同じですが、金融市場が1番嫌がるのは「どうなるか分からないこと(予測できないこと)」です。
なぜなら、資産価格にどの程度織り込めば良いか分からないから。
もはや10年以上も昔の話となったリーマンショックですが、この時も世界中の金融機関が抱える損失額がある程度ハッキリした時点からマーケットは戻り基調となりました。
どれだけマイナスが大きい話であっても、最大でもこの程度という水準感が分かれば、マーケットはわりとポジティブになれます。(マーケットの面白いところです)
重要な材料って何?については次の項目で説明します。
現在の金融市場が注目している材料はこの3つ

細かい材料を入れるとそれこそ無数にありますが、中長期的な方向性の根幹を決めているのは以下の3つです。
・米中貿易協議の行方
・米国経済の状況
順番に見ていきます。
①米国の金融政策:FOMCメンバー内でも今後の見方が分かれている
基本的に通貨は金利の低いところから高いところへ流れると言われており、従って金融政策の行方は為替市場に影響を与えます。
米国の中央銀行であるFRB(金融政策を判断する会合をFOMCと言います)は2015年末から政策金利を引き上げてきましたが、米国経済がリセッション(景気後退)に陥るのを未然に防ぐという名目で、2019年7月から3回金利を引き下げてきました。
(厳密に言うとFRBは中央「銀行」ではないですが、話が逸れるので割愛します)
ただ、利下げが更に続くかはわりと不透明です。
Fedのホームページに載っているドットチャート※を見ると、FOMCメンバーでも見方が割れていることがよく分かります。
※FOMCメンバーの個人別の金利見通しをプロットしたもの。リンク先の「Projections(PDF)」の3ページ目です。分かりにくくてスミマセン。
FOMCは伝統的に満場一致を重んじてきたこともあり今の状態はわりと異例でして、『FOMCメンバー内ですらまとまっていないのに今後の見通しは予想しにくいな・・・』といった雰囲気がマーケットに広がっていることが、ドル円を動かしにくくしている要因のひとつです。
②米中貿易協議の行方:不透明
2018年3月から始まった米中貿易問題ですが、1年半が経過した今もなお継続してまして、これもドル円が動きにくい材料のひとつです。
米国側に有利な結果になればドル高で、逆に不利な結果ならドル安というそこまで単純な話ではないですが、方向感が定まらないこと自体をマーケットは嫌気して動きたくても動けないという状況です。
③米国経済の状況:強くはないが弱くもない
企業収益と雇用環境は安定(むしろ好調)してますが、企業の設備投資見通しはわりと弱気な印象です。企業からすれば前述した②がもう少し定まらないと投資計画を立てにくいということなのでしょうね。
おまけ:日銀の金融政策は袋小路
見出しの通りでして、金利をゼロにしても、実弾をマーケットに流し込んでも(量的緩和)、物価はたいして上がりません。
マイナス金利の更なる深堀など、何かすれば短期的にはドル円も反応すると思いますが、中長期的なトレンドを決定付けるほどの影響力はないと見ています。
なので「おまけ」程度の影響しかありません。
今のドル円は居心地が良い水準

個人的に、米国がドル安を本気で望んでいるかは微妙だと思ってます。
ですので、「米国(トランプ大統領)はドル安を望んでいるからドル安円高になる筈だ」といった見方は少し危ういと考えています。
理由を説明していきます。
【仮説】ドル安支持はトランプ大統領の支持者に対するアピール材料でしかないのでは?
トランプ大統領がドル円について言及するときは決まって背後に支持者がいます。
来年の大統領選に向けて、支持者を意識したドル割高発言が今後出てくるかもですが、マーケット参加者も「また言ってるわ」程度にしか捉えてないので、相当強固なトーンでない限りはドル円の方向性を決めるほどのインパクトはない筈です。
【仮説】ドル安誘導はトランプ大統領個人にとってもインセンティブは低いのでは?
これは個人的に思ってることでして、あれだけドルを持ってるトランプが、ドルを長期的に下げようとするのかな、と。
公開されてないので憶測ですが、海外に資産の多くを置いてない限りドルは高い方が都合が良い筈。
清廉潔白には見えないですし・・・(知り合いでもないのにこんなこと言って良いのかよく分かりませんが)
深読みし過ぎですかね・・・

【事実】米国は輸入大国。ドル安は米国内の物価高を招く
ドル安になって都合が良いのは米国の輸出企業だけです。
輸出が輸入を大きく上回ってるならドル安は国全体としてはメリットがあるかもですが、米国って輸入が輸出よりも多い国なんですよね。(貿易赤字)
日本にいると自国通貨は安い方が良い、「円高=悪」みたいな報道が大半ですが、自国通貨が強いといくことは、海外から物を買うときに有利な立場でいられるということです。
その立場を米国が放棄するとは考えにくいですね。
【事実】米国は「強いドル」で成り立っている国
先ほども申し上げた通り、米国は貿易赤字の国です。
その赤字を何で補っているのか?というと、米国に対する投資です。
米国にとっての外国人投資家がドルに何を期待してドルを買うかといえば、要は儲かりそうだからです。
なので、「ドルを長期的に下げますよ」なんて米国政府が言うメリットって殆どありません。
日本にとっても居心地は悪くない
日本経済にとっても現在の110円近辺という水準は悪くありません。
輸出企業・輸入企業の双方にとっても「まぁ、悪くはないか」と感じることのできる水準です。
個人的な感覚ですが、おそらく120円程度まで円安が進むと輸入企業はアラームを鳴らすでしょうし、100円を切る水準まで円高が進むと輸出企業が悲鳴を上げる気がしています。
今はその中間の水準なので、日本側からドル円を大きく動かしていくインセンティブは働きにくいですね。
将来のインフレヘッジが目的ならドルを買うタイミングはいつでも良い

短期的なトレードを目的とする場合はタイミング命です。
ただ、目的が将来の円安進行によるインフレヘッジであれば、「いつドルを買えば良いか」という疑問自体ナンセンスです。
将来のインフレヘッジとは?
個人的に、資産運用は将来のインフレヘッジに備えるものだと思ってまして、それは株も為替も同じです。
(お金を増やしたい!稼ぎたい!人は仕事を頑張った方が良いです。元手がないのに運用始めても儲けの絶対額は微々たるものです)
元手の全てを1度のタイミングで投資するならタイミングは大事ですが、ドルコスト平均法が投資の世界ではスタンダードですし、ベストなタイミングを探して情報収集する時間は無駄です。
なぜドルを買おうと思ったか?
結局はこれがすべてです。
- 短期的に儲けたい
- 将来の老後資金が不安
短期的に儲けたいならタイミングは重要です。
ですが、短期的な利益を狙うならドルは適してないと思ってまして、よりボラタイル(変動が大きい)な投資対象を選ぶべきです。
短期的に利益を狙う=大きく値下がりする可能性もある、ですが、リスクフリーで儲かるなんて話はありません。
将来に備えたいということであれば、毎月コツコツ投資するべきです。
その場合、ドルでの投資は悪くはないですが、今のドルは金利が低いので、ただドルを持つよりもドルのインデックス(米国株指数など)を買う方をオススメします。
いずれにしても、ドルを買うタイミングを考える前に、まずはなぜドルを買おうと考えているかを明確にすることです。
目的によって投資対象、手法は異なるからです。
まとめ:2019年のドル円が動かない理由

ポイントをまとめます。
・ドル円が動かない理由は「米国金融政策」「米中貿易協議」「米国経済」見通しに不確定な面が強いから
・現在のドル円は日米双方にとって居心地が良い水準
・ドルを買うタイミングは目的次第
以上です。
マーケット関係の記事は今回初めてですが、Bloombergなどがなくてもマーケット情報は得られるものですね。
高いお金を出して利用するメリットはあまりないような気も・・・。
需要がありそうであれば、今後もこういった記事を書いていきたいと思います。
当ブログでは20代・30代の転職をうまく進めるコツを中心に、転職を経験した人間目線の情報を発信しています。
わたしの経歴的にも、金融機関で働いている方にとっては特に有益だと感じていただける情報だと思ってまして、マーケット情報以外の記事も読んでみようかなと思っていただいた方はぜひ別の記事もお読みいただきたいと思います。
ではまた。