読了目安時間:電車1~2駅分

・証券会社を辞めたいけど、いつ辞めるべきか分からない
こんな悩みを抱えている証券会社の方向けにこの記事を書きました。
なぜなら、わたし自身が証券会社で6年働き、他の業界も経験した上で改めて『証券会社は3年で辞めるべき』と考えるからです。
証券会社を辞めたいとお考えの方はぜひお読みください。
!ご注意いただきたいこと!
本記事は証券会社の営業店で働く方向けの記事です。本部のディーリング業務や投資銀行業務に携わっている方向けの記事ではありません。
証券会社を3年で辞めるべき理由をお伝えする前に

本題に入る前にひとつだけ。
これからわたしがお伝えすることは、あくまでもわたし個人の偏った意見です。
内容はすべて本心ですが、物事の側面はひとつではなく、複数あります。
なぜ働くのか?の答えは100%「お金を稼ぐため」な筈ですが、お金を稼ぐという目的を叶えるための手段として 『目の前のお客さんが抱える課題を、自社(自分)のサービスで解決する仕事をする』
この考えを実践するため、証券会社は適さないと思い退職しましたが、それ以外の目的で頑張っている方々を否定するものではありません。(証券会社のノリは実は嫌いではありませんし、今でも付き合いのある人はいます)
もし途中でご気分を害された場合はページを閉じていただいて構いません。
その代わり、わたしはこの記事で100%の本心をお伝えします。すべての証券マン・レディーの方々のお役に立てることを願います。
証券会社を3年で辞めるべき理由【営業力】

証券会社、銀行、外資系金融、コンサルを経験して思うことをお伝えしていきます。
物事はあらゆることすべてが相対的だと思ってまして、以下でお伝えすることは銀行、外資系金融、コンサルと比較した上での話です。
営業力しか身につかない
個人的に証券会社を辞めるべき理由第一位です。
営業力は大事です。
4つの業界を経験しましたが、出世する人は往々にして圧倒的に地頭が良い人か、営業力がある人だったりします。
ですが、証券会社で身につくのは営業力だけです。
営業力の基礎は3年で身につく
個人差は当然ありますが、最低限の営業スキルは3年あれば身につきます。
それ以上を証券会社で働くには、証券会社でなければ身につかないスキルがないと意味がありません。
営業力は他の業界でも鍛えられる
当然ですが、営業力は証券会社でなくても身につきます。
証券会社でなければ身につかないスキルではありません。
営業力には専門性の裏付けが必須
営業力を表現する言葉で証券会社ではよく「石ころでも売れるか」という話が言われます。
石ころという、殆どの人にとっては価値がないものであっても、売る側の人間性が評価されれば売れるし、売れるようになれという精神論です。
個人的にこの手の話は嫌いではないのですが、もはや現代では通用しないですよね。
この例え話で言うなら、現代の営業に求められるのは、石ころを価値あるものと評価するだろう人に、正しく石ころを提案することです。
そのためには石ころについての専門性が必須です。専門性がなければ誰が価値を感じるかの予測ができません。
「証券会社でも専門性は身につく」に対する反論
「証券会社は世の中のあらゆる情報に触れられる環境だから、専門性は身につく筈だ」
こう考える方もいるかもしれませんが、インターネットが普及した現代において、証券マンが情報の最前線に位置しているというのはもはや幻想です。
情報の鮮度に関して優位性はありません。
その他の専門性については後述します。
証券会社を3年で辞めるべき理由【スキル編】

3度の転職を経て思うのは、証券会社時代のスキルは転職市場ではあまり評価されないというものです。
理由は専門性が低いからです。
順番に説明します。
企業を分析する力が身につかない
証券マンの殆どは企業の決算書を読むことが出来ません。
「左側が借方で右側が貸方でしょ?」
「自己資本比率の計算出来るよ?」
と感じる方もいるかもです。
ただ、金融の世界で言う「決算書を読める」とは、『企業の利益構造、課題を想像できる状態』を指します。
証券マンは株式分析のプロではなく、株式という名前の商品を販売するプロです。(最近は株式ではなく投資信託を販売するプロと言った方が良いかもですが)
近年、企業オーナー向けに事業承継やM&Aの提案サービスを強化していますが、企業オーナーにとっての事業承継とは、要は「自社株をいくらで評価してどうやって後継者に譲るか」でして、決算書を読めないのに(自社株の評価が計算できないのに)適切な提案ができる筈がありません。
顧客ニーズを満たす思考が身につかない=論理的思考が身につかない
証券会社はお客さんに「長期投資」を提案しつつ、途中で売ることを促します。
理由は「利益確定」「下げトレンド入りしそう」「勝てる市場が変わった」など色々ありますが、殆どがその場限りの自分の都合で作り上げた世界観(セールストーク)でして、そこに理屈はないケースが大半です。
人間は慣れの生き物だと思ってまして、刹那的な提案を繰り返していくうちに論理的な思考は出来なくなっていきます。ただ、言い訳、屁理屈は異常に上手くなりますw
逆に、論理的思考は日々の訓練で身につくものだと思ってまして、その訓練は証券会社では難しいだろうな、というのがわたしの意見です。
証券マンは自分で投資できない=証券のプロには永遠になれない
証券マンは自分で株を買えません。
正確には「3ヶ月売れない」ですが、売るためには支店長などから都度承認を得る必要があります。
現実問題、そこまでして株を売り買いする証券マンは皆無でして、ですので株式を売る証券マンはほぼ全員が投資についてはズブの素人ということになります。
正直、お客さんの方が投資について詳しいです。
「お客さんから預かった資金で株を売買してもらっているから投資の感覚は身につく」
こう考える方もいるかもですが、
- 自分のお金で株を買う
- 人のお金で株を買う
この2つでは精神的なプレッシャーはまったく異なります。
(ファンドマネージャーも人のお金で株を売買しますが、そこには責任が生じます。証券マンには生じません)
証券会社を3年で辞めるべき理由【マインド編】

証券会社で働き続けると性格変わります。
大抵は悪い方に。
頭の中はいつも仕事で一杯
行き帰りの電車の中はもちろん、家族と夕食を共にしているときも(そもそも取れないかもですが)、奥さんの実家にいるときも、旅行に行っているときも常に頭の中は仕事です。
所謂、「デキる」と証券会社で言われている人ほどその傾向があります。
そんな人生、楽しいですか?
他人の成功を喜べなくなる
近隣支店と月次の達成率で競争しているとき、その近隣支店で決まると思っていた大口案件が決まらなかったときに支店内で「ヨシ!!」という歓声があがります。
何が「ヨシ!!」なのか。(わたしも言ってましたが)
「お客さん=お金」にしか見えなくなる
当然ビジネスなので、お客さんとプライベートでも付き合うような濃い関係が必ずしも良いとは限りません。
ただ、証券会社の中にはあまりにもお客さん軽視の人は存在してまして、そういった人はお客さんを「手数料を生み出す機械」としか見ていません。
そうはならない!と心に誓っても、殆どの人は年齢を重ねるにつれて、なりたくないと思っていた上司みたいな人間になっていきます。
証券会社を辞めれない理由も分かります

辞めれない理由はこのあたりかと。
・辞めて逃げたと思われたくない
・辛いけど成果が出てるから辞めるのは勿体ない
わたし自身も証券会社を辞めるときは相当勇気を振り絞りましたが、その後、外資系金融・コンサル・銀行で働いて思うのは、あのとき決断した自分を褒めたいと心の底から思うということです。
証券会社に居続けてもスキルは身につかない!
これまでにお伝えしたように、証券会社で身につくのは営業力の基礎だけです。
そして、顧客ニーズに沿った提案を思考する訓練も、日々の数字に追われる証券会社では身に付きません。(できるのはほんの一部のごく限られた人だけです)
ずっと同じ会社で働くのであればそのままでも良いかもですが、ある日突然転職市場に放り出されたことを想像してください。営業力以外に他の業界でもやっていけると思えるスキルはありますか?
ないのであれば、迷う必要はありません。
「逃げたかどうか」を決めるのは自分自身!
証券会社は何故か辞めた人間にわりと辛くあたることが多いです。
恐らく、辞めた=仕事できない=馬鹿にする、という思考回路だと思いますが、そういった意見の人と関わる必要性はありません。
逃げたかどうかは自分が決めること。
周囲がなんと言おうと関係ない筈です。
あなた自身が自分を信じられればそれで十分ではないですか?
まとめ:証券会社を3年で辞めるべき理由

ポイントをまとめます。
・証券会社では専門性は身につかない
・ある一定以上の営業力には専門性(お客さんが価値があると思えるもの)が必須
・証券会社では企業の分析力が身につかない
・証券会社に居続けると頭の中は常に仕事のことだけ
・証券会社を辞めても「逃げたかどうか」を決めるのは自分自身
最後にお伝えしたいことは、「本当に辞めたいなら迷わずに辞めるべき」ということです。
仮に証券会社が向いてないと思って辞めたとしても、誰からも咎められることではないです。
向いてないから向いてると思う他の業界に転職した、それだけです。
個人的に証券会社のピリピリした空気感や日々数字を積み上げていくスタイルは嫌いではないのですが、正直、お客さんのニーズからはかけ離れているのが現実だとも思います。
わたしのように証券会社を好きという訳でもなく、ただ「辞めたい」と自問自答しながら、自分を押し殺しながら日々を過ごすことに果たして意味はありますか?
ありきたりな言葉ですが、人生は一度きりです。どうかこの記事が「証券会社を辞めたい」と思っている方の背中を押すものであればと願います。