証券会社

【業界研究】証券会社の実態・将来性

2019-11-16

(読了時間:電車2~3駅分)

 

「現在在籍している業界と、転職したい業界の給与・働き方・将来性を比較した情報はないだろうか?」

 

この疑問にお答えします。

わたしはこれまでに3度転職しており、証券会社・銀行・外資系金融・コンサルを経験してきました。

本記事では、わたしが実際に転職して見てきた事実を踏まえ、わたしの個人的な意見をご紹介していますので、転職をお考えの方にはぜひお読みいただきたいと思います。

 

本日のテーマはこちら。

 

【業界研究】証券会社編

※対面型の証券会社にフォーカスをあてます

 

証券業界の現状など一般情報をすでに理解されている方は、目次「5.個人的な意見」からお読みいただければと思います。

 

本題に入る前に 

 

この記事にたどり着いた方の中には、証券会社から他の金融会社への転職をお考えの方だったり、逆に証券会社への転職を考えている方もいらっしゃると思います。 

 

独自性を重視してますので一般的な情報が網羅されている訳ではありません。

その点はご注意ください。

 

現在のビジネスモデル

証券会社のビジネスモデルはフロービジネス型です。

 

フロービジネスとは、取引が1度切きりで継続しない売り切り型のビジネスを指します。

ですので、世の中にあるビジネスの殆どはフロービジネスだと言えます。

 

反対に、1度の契約で継続してフィーが得られるビジネスはストックビジネス型と言われています。

典型例はお金を貸して金利を得る銀行や、毎月安定して電力料金が払われる電力会社ですね。

仕組みを構築することが難しい反面、一度ビジネスとして成立すれば安定しやすいタイプです。

 

関連記事【業界研究】銀行の実態・将来性

 

証券会社の代表的な業務を見ていきます。

 

有価証券の販売

 

個人や企業が持つ「お金を増やしたい」などのニーズに有価証券を販売することで対価を得る業務です。

 

株式、債券、投資信託を中心にさまざまな金融商品が存在していて、その中から証券会社が最適な商品を提案します。

お客さんを担当する営業員には高い金融知識、高い情報感度などが求められます。

 

トレーディング

 

自己売買部門とも呼ばれます。

 

証券会社が自分のお金を運用して儲けを狙うビジネスです。

市況に左右される面はあるものの、儲かるときは大きく儲かるという業務です。

 

証券市場での資金調達アドバイザリー

 

投資銀行業務とも呼ばれます。

 

上場企業が市場で株式を発行するときや未上場会社が上場するとき、M&A(合併・買収)など、比較的規模の大きい企業に対して資本周りのコンサルティング提案を行う部門です。

 

「証券会社」というぐらいなので当たり前な話ですが、株式などの証券市場の影響を強く受ける業界といえます。

 

証券会社にとっての脅威

  • 低コストのインターネット証券
  • 知識のフラット化
  • 顧客離れ

 

順番に見ていきます。

 

低コストのインターネット証券

 

インターネット証券は株式などを取引きする際の手数料が圧倒的に安いです。

 

どのくらい安いかというと、例えば20万円分の株式を購入したとするとこんな感じです。

 

  大手証券A社(対面) 約2,000円

  インターネット証券B社 約300円

 

次元が違います。

 

インターネット証券は人件費や店舗などを基本必要としないので、浮いたお金を顧客に手数料として返すことが可能です。

全国津々浦々に店舗を広げる対面型証券会社にはできないサービスです。

(厳密には対面型証券会社もネット取引は可能ですが、それだけで会社全体の高い固定費は賄えません)

 

インターネット証券の台頭はもう10年以上前からの流れですが、ここ数年で更に広がっている印象があります。

 

それは次の理由が大きいです。

 

知識のフラット化

 

対面型の証券会社に運用を相談する人は、証券会社に何を期待しているでしょうか?

 

答えは「専門性」です。

 

金融のプロとしての意見・考え方を聞きながら、相談しながら資産運用をしたい

 

これがニーズです。

 

ただ、インターネットの普及によって、資産運用はごく一部の限られた人たちの物事ではなくなりました。

 

今はネットで調べれば大抵のことは調べられる時代です。

金融市場を動かすニュースも、今はスマホですぐに見ることができます。

 

証券会社とお客さんとの間にあった情報格差はもうなくなったんです。

 

テクノロジーの進化

 

近年、金融市場は人間の意志ではなく、AIによる自動売買の影響を強く受けていると言われています。

 

米国のトランプ大統領がツイッターでつぶやいたことが、数秒後には株式市場や為替市場などに織り込まれる世界です。

 

このスピード感に人間は絶対に追いつけません。

 

証券業務の大部分は人間ではなく機械が担う時代が来ています。

そして、この事実を知る投資家が対面型証券会社から離れているのが現実です。

 

現在、証券会社が取組んでいること

ストックビジネスへの移行を目指す

 

証券会社はお客さんに取引をしてもらわないとフィーが得られないフロービジネスですので、お客さんに売買してもらうことを提案しがちです。

 

これが世間では「回転売買」などと批判されている訳ですが、証券会社自身も問題点は認識しているので、ストックビジネス型への移行を模索しています。

 

具体的には株式や投資信託を頻繁に売り買いしてもらうスタイルから、投資信託の残高を増やして「信託報酬」と呼ばれるフィー(年間手数料みたいなもの)をもらうスタイルへの移行です。

 

NISAも追い風

 

NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)とは株式や投資信託などの運用益や配当金が非課税になる制度です。

 

証券業界はNISA利用を目的とした個人投資家の取り込みを狙っていて、各社が躍起になっている状況です。

政府が「貯蓄から投資」へと若い世代に対して資産形成を促していることも、背景にあります。

 

富裕層をフォーカス

 

プライベートバンキング業務、ウェルスマネジメント業務・・・

言い方は色々ありますが中身は殆ど同じです。

 

金融資産が数億円、または数十億円を超えるようなお客さんを取り込む動きが活発です。

 

こういった富裕層、超富裕層に対して、資産運用にとどまらず相続対策などの一個人にとどまらない、一族に対する提案を行ってフィーを取り込むビジネスです。

 

今はどの業界でもお金持ちを対象としたビジネスが注目を浴びてまして(儲かるから)、証券会社も注力しています。

個人的な意見

証券会社の営業員に相談する意味が薄れている

 

先程もお伝えした通り、証券会社とお客さんとの間に合った情報格差はもうありません。

(あるとすればそれはもうインサイダーですね)

 

となると、証券会社の営業員に資産運用を相談する意味とは何でしょうか?

 

よく言われる理由は

 

「専門知識を持つ人から運用のコツを教わりたい」

 

ですね。

 

ここに一定のニーズがあることは分かりますが、果たしていつまで続くでしょうか?

 

なにから始めれば良いのか分からない ⇒ Google検索窓に「資産運用 始め方」と打ち込めば情報は得られる

専門知識を持つ人から運用のコツを教わりたい ⇒ Google検索窓に「資産運用 コツ」と打ち込めば情報は得られる

時間がないからプロに教わりたい ⇒ 運用アプリでOK

 

この流れに果たしてどこまで抵抗できますかね。

無理ですよね。

 

運用は詳しければ儲かるというものではありません。

頭が良い人が儲かるなら、そんな分かり易い話はありません。

運用の世界は頭で理解したから必ず儲かるという訳ではないです。

 

これらのことにお客さんは完全に気付いていると、証券会社の営業員も気付いています。

 

加えて、証券会社の営業員は、自分のお金で自由に有価証券を売買できません。

株式や為替の動きは理屈では説明しようのない動きを見せることが日常茶飯事です。

その動きについていくには、日頃から自分事として運用を経験していることが重要です。

 

証券会社の営業員は実はまともに運用をしたことがないからアテにならない、といった考えはもはや常識です。

 

中長期的な視点であればそんな日々の上下動に一喜一憂する必要はない、という意見もあるかもですが、

 

「それなら運用アプリでアセットアロケーション(※)を決めて、機械的に時間分散していけば良いのでは?」
※投資家のポートフォリオ内の各資産(株式・債券など)の割合をリスク許容度、目標などに応じてあらかじめ決める投資手法

 

これが私の意見です。

 

日本人の大多数は「証券投資=ギャンブル」

 

この考え方は根強いです。

 

わたしは別にアメリカ的な発想(貯蓄よりも投資)がなによりも優れている訳ではないと思っています。

 

お金を銀行に寝かしてても勿体ないと思う人は運用すれば良い

運用はせずに自分で働いてお金を稼ぐ(増やす)んだという人は自分で運用すれば良い

 

どちらの考えでも良いと思います。

 

大事なことは、お金を増やすことは誰かに言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えて判断すべきだということです。

 

運用は奥が深くて、楽して稼ぐということはほぼ無理かと。

 

「何から始めれば良いか分からないから証券会社の営業員に聞くのもアリでは?」

 

こういった意見もあるかもですね。

 

もちろん、相談することは自由です。

ただ、証券会社の営業員はお客さんの金融リテラシーを高めることが目的ではありません。

 

「稼ぐこと」です。

 

自分に知識がない状態で、ポジショントークに影響されずに判断できますかね。

 

規模の縮小は不可避

 

個人投資家が資産運用のノウハウを自分たちで身につけてきたことや国民性もあって、個人的には対面型の証券会社は今後、規模を縮小することでしか生き残っていけないと思います。

 

あるいは、従業員のお給料は下げざるを得ないとも思います。

 

潰れはしないかもですが、とても明るいとは言えないですね。

 

更に、近年はIFAが急速に広がってきています。

 

IFAとは「Independent Financial Advisor」の略で、特定の金融機関に属さず、独立した立場でお客さんに資産運用のアドバイスを行う人たちを指します。

証券会社を辞めた人たちが、独立して、証券会社と業務委託契約を結んで、有価証券を自分のお客さんに提案するサービスです。

IFAは「会社の方針で提案商品を決められることに疑問を抱いた方たち」ですから、顧客目線で考えれば証券会社よりも信頼は得られやすいと思います。

 

個人が目指すべき道

徹底的にスキルを高めること、専門性を高めることしかないと思います。

 

「銀行編」と似た結論ですが、インターネットの普及と個人投資家の金融知識が格段に上がってきていることを踏まえれば、同じような結論になるのかなと感じます。

 

関連記事【業界研究】銀行の実態・将来性

 

具体的には以下の3つだと考えます。

 

  • AIができない分野の専門性を高める
  • 一族のお金周りのアドバイザーを目指す
  • 会計知識は必須

 

順番に見ていきます。

 

AIができないことを極める

 

機械の高度化では対応できないことを高めることでしか、営業員個人が自分の身を守ることはできないと考えます。

 

証券会社の窓口業務が今後増えることは考えにくいですし、人間でなければできないことを常に考え続ける必要があります。

 

ではAIができないこととは何か?

 

個人のアドバイザーから、一族のお金周りのアドバイザーへ

 

富裕層を対象としたプライベートバンキング業務と同じような考え方です。

 

お金を増やすというよりも、

 

  • お金をインフレから守る
  • お金を税金から守る
  • お金を無駄なく一族に配分する

 

こういったことをお客さんと相談しながら、商品や節税スキームなどの付加価値を提案して、価値に見合ったフィーをもらいます。

個人、特に富裕層の悩みは個別性が高いので、AIではなかなか難しい分野だと思います。

 

売買手数料に依存するスタイルはニーズが存在しないので、過去の遺物になると思います。

 

会計知識は必須

 

一族のお金周りのアドバイザーになるには、税金の知識ももちろんですが、まず大前提として会計知識が必須です。

 

なぜなら日本の富裕層の多くは企業家(会社経営者)であるからです。

 

例えば相続税の対策をする上で、まず最初に社長が所有している会社の評価額を計算しますが、決算書を読めなければ計算できません。

 

専門的な分野は本部の専門部署の人に任せるというスタイルが証券会社(というより金融機関)の主流ですが、この方法だともうこれから通用しないと思います。

 

なぜなら、プライベートバンキング業務的なビジネス、オーナー社長のお金周りの相談に答えるビジネスはコンサルティング会社と完全にバッティングしてまして、専門性は彼らの方が高いからです。

コンサルとバッティングして勝つことを狙う上で、本部の専門家を呼ぶというスピード感だと太刀打ちできません。

 

逆に彼らは金融の知識を持たないので、証券会社の営業員が会計知識を身につければ、金融の知識がもとからある分、会計知識だけのコンサルよりも総合的に価値が高い人材として見られやすくなります。

 

そこで勝負するべきだと思います。

 

ただ、実は証券会社の営業員の多くは決算書を読めません。

 

読むことが必須な環境に身を置かれることがないからです。

 

「知識がなくても営業力でやっていけるから別に勉強しなくてよい」

 

こんなことを言う証券会社の営業員が時々いますが、営業力は専門性のプラスアルファの材料として使うべきです。

(偉そうなことを言ってますが、わたし自身も証券会社時代は「営業力があれば十分」だと思っていました。が、転職してその考え方は間違いだと気付きました

 

お客さんの知識量は今後もますます増えていく時代に、「専門性がない=付加価値がない=顧客にメリットがない」アドバイザーに付いてきてくれる奇特な人が一体どれだけいますかね?

(そんな人を自分の親に勧められますか?)

 

そのためにも会計知識の習得は必須です。

具体的には、まずは簿記2級から勉強していくことをオススメします。

 

「簿記・・・地味だな~、意味あるの?」

 

と思うかもですが、個人的には簿記2級ほどコスパが良い資格はないなと思います。

 

関連記事【30代】転職で資格は必要か?

 

まとめ:

ポイントをまとめます。

 

■業界

  • ITの進化(低コストの競合他社、知識のフラット化)を受けた顧客離れが止まらない

 

■個人的な証券業界の見通し

  • 資産運用を証券会社の営業員に相談する人たちは減少し続ける
  • 対面証券会社は規模の縮小は不可避

 

■個人が目指す道

  • AIができない、富裕層のお金周り全般のアドバイザーを目指す
  • 徹底的にスキルを高めることが必須
  • 具体的には会計知識の習得が必須

 

前回の銀行編と同様、悲観的な内容になりました。

 

個人的には、新卒で初めて入った会社が証券会社ということもあり、思い入れがあります。

 

無形商材を販売する能力、営業力はあらゆる業界と比較しても恐らくトップクラスだと思う一方、営業力があるからこそ、逆に顧客本位のサービスを突き詰めるという観点が決定的に抜け落ちている業界にも思います。

専門性を高めることができた人は生き残っていけると思いますが、業界全体としても安泰かと言われれば、正直、今の証券会社の取組みでは足りないとも思います。

 

このままインターネット証券に飲み込まれていくのか、それともまったく新しいサービスで顧客ニーズに応えていくのか。 個人的には証券業界の復活を期待したいですね。

 

ではまた。

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妻・娘・犬と暮らす30代現役銀行員。証券ドブ板→外資プライベートバンク→M&Aコンサル→銀行マーケット部門。保守的な業界に在籍してますが会社のしがらみ関係なく思ったことを発信しています。趣味はゲーム、読書、自転車。

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